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毎日、朝、同じ時刻に同じ道を通っていると、いつも変わらぬ光景、それでいて少し
ずつを変化を遂げている光景を目にする。
「水車橋」のバス停では、いつもこの時間のバスを待つ中年女性を見かける。かとい
って私はバスに乗る日もあるし、その時の気分で乗らないときもあるから顔なじみにな
っているわけではない。それでもなんとなく目を合わせるようになってきている。
少し道を進むと、10本くらいの大木に囲まれた古い大きな家があったが、そこが壊
され、平地に整地され、基礎工事が行われ、やがて5階建てのマンションが出現した。
もう少し駒沢通りに近い「三谷」というバス停の脇にも、120坪ほどの駐車場があ
ったが、ここもあるときから車がなくなり、土地の区画が整備され、そこに木造3階建
ての建売が6棟建設されたが、瀟洒な住宅が完成したと思ったときから、もう6戸とも
入居している気配が見えた。
そんな中で、いつも変わりなくジョギングしている若い女性がいる。
彼女は、冬も、この夏も、そして残暑の9月も、いつもダブダブのトレーニング・ウェ
アに身を包んで、ゆっくりとゆっくりと走っている。そのスピードは決して速くなく、
例えばせっかちな私が彼女の後について、そして競歩の要領で彼女を抜き去ろうとすれ
ば、ことによるとそんなに苦労しないで追いつき、追い越しができるかもしれない。そ
のくらいにゆっくりとした走りである。
でも考えてみると、私がこの道を歩く時間は大体朝の9時前後だ。私は自由業の事務
所に勤めている、とは言っても、どうせ退職公務員の片手間事務所だから仕事が山にな
っているわけではない。ま、9時半頃にでも顔を出せば早い方だ。
つまり、普通の人ならもう勤め先や仕事先で平常の業務についている時間であり、の
んびりとジョギングするような時間ではない。それに、この場所も、世田谷区とはいえ
閑静な住宅街でもなければ等々力渓谷のような空気が綺麗な山道でもない。都心と違っ
てクルマの量が少ないとはいえ、立派に排気ガスで溢れているバス道路だ。
どうして彼女はこんな時間に、そしてこんな場所で、しかも見ているだけで汗が出る
ような格好で、こういう運動をしているのだろうか?
考えてみれば、何か不思議なものを見ているような気がしたものだ。
ただ、今までは彼女と直接同じ歩道ですれ違うということがなかった。車道を鋏んで
反対側の歩道を走る彼女を「ちらっ」、「ちらっ」とみる程度であった。そういう彼女
は、だぶだぶのウェアに包まれるのが相応しい、ふっくらとした顔をしているように感
じていた。
ところが、この9月に入ってからは、2回ばかり、同じ歩道で彼女とすれ違うことが
あった。その理由は、私がバスに乗ろうとして、いつも歩いている歩道ではなく、バス
の乗降のできる反対側の歩道に回ったからである。
たまたまそういうときに彼女とすれ違ったのである。
そのときに見かけた彼女の顔は、随分と細く、また引き締まった顔立ちであった。だ
から反対側の歩道から感じていた顔とは異なるものであった。
これはどう考えれば良いのか、未だに疑問に思っているが、ひょっとしたら彼女は、
あの厚いウェアに身を包んで、ダイエットのためのジョギングをしていたのではないの
か?
そして、それが次第次第に効果を挙げてきているのではないのか?
そうであったら、何故か我がことの様に嬉しい気がしてくる気がする。
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