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お湯割り焼酎

 投稿者:能彦  投稿日:2004年 9月18日(土)20時41分38秒
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   お酒を飲んで、少しばかり酔っ払ってしまい、店の経営者に説教してしまった。
 ことの次第はこうである。
 ある会議の後にちょっと乾杯程度の懇親会があり、その後流れ解散になったので事務所に帰ってきた。事務所では会議の資料の整理や、不在時の伝言などを整理して、今度は帰宅するつもりで電車の駅に向ったが、見かけない新しい看板のレストランがあったので、おやと思って営業品目を確かめると、洋風の店なのにおでんや和食が中心である。
 途端に、先ほどの懇親会ではあまりお酒を飲んでもいないし、食べ物もとっていなかったことに気づいた。
 そこで、ドアを開けて店に入り、カウンターに座った。
 出されたメニューをみると、お酒の部では大好き鹿児島県産の芋焼酎の銘柄ばかりが沢山並んでいる。つい嬉しくなって、焼酎のお湯割を頼んだ。
 
 ところが、その店のマスターらしき若い男性は焼酎は、ロックか水割りかストレートだけで、お湯割りはないという。
 「えっ!どうしてお湯割がないの?おでんがあるのにお湯を沸かさないの?」
 私はすっかりびっくりして、こんなとんちんかんな質問をした。
 すると、マスターは
 「いえ、当店で置いている芋焼酎の銘柄は、ロックか水割りでないと美味しくいただけないものですから。。。」
 このマスターは、タレントの木村拓哉に似た甘いマスクの青年で、おでんやには似合わないクリーム色のスーツに身を包んでいる。
 どうも私は、普通の趣向ではないおでん屋に入ったようである。
 これはちょっと勝手の違った店に入ったかな、、、と後悔したが、でもおでんだけでも食べられたら良いと思うことにした。
 「あ、そう。それじゃ、飲み物は水だけでいいよ。あとはおでんを下さい。」
と注文を訂正した。

 やがて、冷たい水とおでんがきたが、、、、しかし、どうもお湯割りを出さない、という店の方針には疑問が残った。
 そこで、食べながら、カウンターの奥にいるマスターに声を掛けた。
 「芋焼酎でお湯割を出さないというお店は初めてなんだけど、薩摩の芋焼酎なら普通はお湯割で飲んでも美味しいよ。このメニューの一番上の焼酎は何か変わっているの?」
 と改めて真面目な質問をした。
 すると、マスターよりも先に、彼の脇にいた店員がそのメニューの一番上にあった焼酎の瓶を取り上げて、、
 「この焼酎は鹿児島県のカワウチの産で、皆さん、ロックで飲む方が美味しいと言われるんですよ、、、、」と言いかけた。
 しかし、私は、彼が「カワウチの産で」と言いかけたところでカチンときた。
 そこで、皆まで言わせず、捲くし立てた。どうも、懇親会のときのお酒が今頃利いてきたらしい。

 「ちょっと待てよ!今、なんて言った?『カワウチ』だと!それは三本川に内側のウチという字だろう?それはカワウチなんかではないよ。センダイって読むんだ。察するところ、薩摩の芋焼酎の飲み方を講釈しているが、ほんとうは薩摩のことを何にも知らないんだろう?それなのに、当店ではお湯割りは出さない、なんてとんでもない話だ。ついでに聞くが、『出る』のシュツという字にお水の『スイ』という字を並べた所はなんて読むか分かるのか?」
 マスターはあっけに取られ、隣の店員は驚いて
 「お客さんは鹿児島県のご出身ですか?」
と聞いてきた。
 「鹿児島じゃないよ、秋田県だ。秋田県の人間だって鹿児島県の焼酎をお湯割で飲んだら美味しいってことは知ってるんだ。さ、いいから「出る」と「水」で何と読むんだ?」
 どうやら、少し離れたところのボックスにいた4人ばかりの客も、何事か始まったかとこちらを窺っているらしい。
 その店員は
 「デミズですか?」
 と、自信無い様子で口をもぐもぐさせた。
 「ほら、やっぱり分かってない。これは『イズミ』て読むんだ。ついでだから言うけど、これは鹿児島県じゃない、熊本県だが、最近新幹線駅のできた八に代替わりの「代」のつく市を地元じゃ何と読むか分かるか?」
「ヤツシロでしょ?」
即座にマスターが応じた。
 「違うよ。標準語ではヤツシロだが、地元じゃ誰もそう呼ばない、「ヤッチロ」が正解だぞ。そんな風に産地や地元のことも分からん癖に『芋焼酎のお湯割りは出さない!』って言うなんて可笑しいと思わないか?分かったら、焼酎とお湯を半々にしたお湯割を出せよ!」

 私は、別に凄んでいる訳ではない、笑顔でしゃべっているのだが、活字にすると凄んでいるかのようだ。しかし、実際は早口で捲くし立てているだけだから、遂にマスターも笑い出してしまったし、ボックスの4人のお客さんからは拍手が飛び出した。

 こうして、ようやく私はお湯割りの焼酎にありつけた。



 
 
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